2026年5月17日日曜日

遠足の傷の手当を正しけり 湯屋ゆうや

〈俳句物語〉 岡田耕治

遠足の傷の手当を正しけり 湯屋ゆうや

 空の弁当箱がシンクのボウルに浸けてあるのを見て、今日の遠足は楽しかったんだと思った。塾のある日は別々に食べるが、今夜は幸平と夕食を共にし、話を聞こうと帰りを待った。

 午後八時、ドアが開いた。帰宅した幸平の額には、一枚の絆創膏。

「どうしたの」と訊くと、ジェットコースターの一番乗り競争をして、坂道で転んだのだという。

「痛かったでしょう。あ、少し血が滲んでるわね。貼り替えようか」

 引率の教員が貼ってくれた絆創膏をゆっくり剥がし、消毒液で優しく拭う。少し小さめの新しい絆創膏を貼り直しながら尋ねた。

「みさき公園は、久しぶりだったわね」

「うん、小三の時にお父さんと行って以来かな」

「閉園になるって聞いたけど、どうだった?」

「アトラクションはそのまま遊べたけど、動物園の方はちょっと寂しかったかな。面白かったのはジェットコースターと、パイレーツ。あと、お弁当も美味しかったよ」

「ありがとう。職場の同僚やPTAでも、みんな高学年になると、すぐシャッターを下ろしてしまうって聞くわ。幸平が何でも話してくれてうれしい」

幸平は照れたように言った。

「いや、お母さんがいっつも楽しそうだから」




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