2021年7月27日火曜日

タクシードライバーに先ず暑さ告ぐ  耕治

 
十河 智
 タクシーに乗るまでが大変だったのでしょうね。家とか駅前などの冷房の端っこで、待ってた訳ではなさそうです。暑さで参ってしまって、タクシー乗り場などとても探していられない疲れ様、でも田舎でなくても、流しのタクシーを拾うのはなかなか大変なのです。
 やっと乗り込んだタクシーの冷房にほっと一息。反作用で、暑さのことが口をついて出るのです。人に会った、何かを言いたい、伝えたかった一番のことが、自分に襲いかかった「暑さ」だった。案外とみんな経験していて、あんまり俳句にはしない題材。却って新鮮に見えました。

大津留 直
 この句の要は、「先ず」という措辞。この短い副詞のお蔭で、読者の想像がいろいろ展開していくのだと思う。不思議なことだ。「暑さ」という季語が、タクシードライバーとの会話の中で、独特の精彩を放っていることに注目したい。

0 件のコメント:

コメントを投稿