香天集10月11日 岡田耕治 選
三好つや子
赤蜻蛉目線をずらすタイミング
縁側に秋思の尻尾また動く
秋桜風の横顔スケッチす
歌女鳴くや昨日と違う骨密度
浅海紀代子
身の傷を増やして秋の来たりけり
ロッキングチェアに秋思を預けおり
虫の夜地図を旅しておりにけり
我が影の我より老いて秋の風
佐藤静香
掛物は月の禅語や風炉名残
何も無きに躓く天狗枯尾花
月曜の朝の血圧小鳥来る
尾てい骨に天狗の力葛根掘る
佐藤諒子
山門へ誘われている萩の波
杖二本我が田見守る生御魂
涙道が詰まりしという後の月
いつまでも思案する鷺秋の水
佐藤浩章
赤い羽根映ゆるや後期高齢者
百薬も百毒もなき新酒かな
うそ寒やうどんに一味たんまりと
曼珠沙華ニーチェのごとく狂ほしき
垣内孝雄
嵯峨菊の鉢を並ぶる好々爺
片言の妻との会話焼き秋刀魚
草の花旅の名残の道祖神
柿吊す納屋の軒下猫と妻
岡田ヨシ子
暑きことエレベーターの六人に
ハンガーの数だけ洗う夏の服
折紙を学んでいたり月兎
玄関の色紙差し替え秋彼岸
〈選後随想〉 岡田耕治
秋桜風の横顔スケッチす 三好つや子
風に揺れる秋桜と、その美しさに引き寄せられてふと風を描く情景が詠まれている。コスモスの繊細な佇まいと、それをスケッチする作者の静かなまなざしが一体となり、秋のひとコマが鮮やかに浮かび上がる。風をスケッチしているのは、秋桜そのものかも。
我が影の我より老いて秋の風 浅海紀代子
秋の日の傾いた光の中、ふと地面に映る自分の影を見たとき、そこに実年齢以上の老いを感じ取った瞬間が捉えられている。秋風の冷たさが身にしみるとともに、人生の哀愁や自身の内面にある衰えへの鋭い洞察が、胸に迫る余韻を残している。
*我が通る幅に切られし乱れ萩 岡田耕治
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