肩幅に開く父の日の新聞 花谷 清
「藍」8月号。今でこそ電車の中で新聞を読む人は少なくなりましたが、かつては通勤車中では新聞を開く音があちこちから聞こえてきました。満員電車ですから、家にいるように新聞を開くことができません。そこで、新聞の紙面を縦に半分に折って、ページを開いていく人が多かったです。これだと、掲句のように肩幅で新聞を開くことができます。父の日ですから、休みの日である父が多いと思いますが、休みの日でも通勤の車中と同じように新聞を縦に二つ折りにして読んでいる、そんな父の姿が彷彿とする一句です。
*大阪府庁別館の向かいに建設中の大阪国際がんセンター。
2016年8月9日火曜日
2016年8月8日月曜日
「八月」12句 岡田耕治
「八月」 岡田耕治
八月や指紋認証からはじまる
地球より身を起こしたる昼寝覚
呼ぶ声を真っ直ぐに来る夏足袋よ
夏の海手放しで泣き始めたる
緑蔭に入ってしまう塩むすび
泥鰌鍋はじめは黙り合って喰う
弟が兄に噛みつく天瓜粉
夕立の自転車キュッと到着す
満員の中にしゃがめる白靴よ
汗とともに昭和の話出てきたる
日雷六秒を待つことにして
消しゴムの香りを集め原爆忌
※八月は海。岬町小島から大阪湾を望んで。
八月や指紋認証からはじまる
地球より身を起こしたる昼寝覚
呼ぶ声を真っ直ぐに来る夏足袋よ
夏の海手放しで泣き始めたる
緑蔭に入ってしまう塩むすび
泥鰌鍋はじめは黙り合って喰う
弟が兄に噛みつく天瓜粉
夕立の自転車キュッと到着す
満員の中にしゃがめる白靴よ
汗とともに昭和の話出てきたる
日雷六秒を待つことにして
消しゴムの香りを集め原爆忌
※八月は海。岬町小島から大阪湾を望んで。
2016年8月7日日曜日
香天集8月7日 中嶋飛鳥、玉記久美子、森谷一成…
香天集8月7日 岡田耕治 選
中嶋飛鳥
息止めるその十秒の涼しさよ
蝉鳴きて山の容の歪み出す
百物語早くも喉の渇きたる
蝉時雨時計の見える椅子の位置
玉記久美子
水着より水奪いたるベンチかな
詩の国のグラジオラスの反っている
スプーンに夏の渚というところ
真っ先に鳴りだす風鈴はどれだ
森谷一成
グラビアに飽きて蛙の目借時
横長の墨画の如くさみだるる
黒南風に抱く真白のぬいぐるみ
緑陰の少女に降ってくるバトン
大杉 衛
じゃんけんの最初はみんな甲虫
昼寝から覚め少年のカタカナ語
青すすき草月流に靡きけり
停車場と波止場と西日差すところ
竹村 都
黒南風や声高くなる阿弥陀経
梅雨あがる磯の香のするバーベキュウ
ここからは海だったと言う麦藁帽
暑き日の貨物列車の続いている
羽畑貫治
傾きて退院をする今日は夏至
青大将家主を看取るつもりらし
遠出する行先決めず土用浪
何事も素直に聴いて夏雲雀
越智小泉
来ては去り又来ていたり夏の蝶
海開き靴に靴下入れて持ち
蝉しぐれ難しきこと考えず
手と足を動かしている昼寝覚
中辻武男
青蘆の光みなぎり河川敷
冷奴薬味を溢れさせている
風鈴の音続き出す日暮かな
天上の友が見ている百日紅
村上青女
水をやるひぐらしの声確めて
一人泳ぐ市営プールの秋茜
投錨の音に始まり夏の朝
平和への祈り果てなき星祭
※大阪教育大学のある金剛生駒紀泉国定公園。
中嶋飛鳥
息止めるその十秒の涼しさよ
蝉鳴きて山の容の歪み出す
百物語早くも喉の渇きたる
蝉時雨時計の見える椅子の位置
玉記久美子
水着より水奪いたるベンチかな
詩の国のグラジオラスの反っている
スプーンに夏の渚というところ
真っ先に鳴りだす風鈴はどれだ
森谷一成
グラビアに飽きて蛙の目借時
横長の墨画の如くさみだるる
黒南風に抱く真白のぬいぐるみ
緑陰の少女に降ってくるバトン
大杉 衛
じゃんけんの最初はみんな甲虫
昼寝から覚め少年のカタカナ語
青すすき草月流に靡きけり
停車場と波止場と西日差すところ
竹村 都
黒南風や声高くなる阿弥陀経
梅雨あがる磯の香のするバーベキュウ
ここからは海だったと言う麦藁帽
暑き日の貨物列車の続いている
羽畑貫治
傾きて退院をする今日は夏至
青大将家主を看取るつもりらし
遠出する行先決めず土用浪
何事も素直に聴いて夏雲雀
越智小泉
来ては去り又来ていたり夏の蝶
海開き靴に靴下入れて持ち
蝉しぐれ難しきこと考えず
手と足を動かしている昼寝覚
中辻武男
青蘆の光みなぎり河川敷
冷奴薬味を溢れさせている
風鈴の音続き出す日暮かな
天上の友が見ている百日紅
村上青女
水をやるひぐらしの声確めて
一人泳ぐ市営プールの秋茜
投錨の音に始まり夏の朝
平和への祈り果てなき星祭
※大阪教育大学のある金剛生駒紀泉国定公園。
2016年8月6日土曜日
国家国土国民のわれ汗しとど 宇多喜代子
国家国土国民のわれ汗しとど 宇多喜代子
「現代俳句」8月号。中学校の社会科では、国を構成する要素として、政治、領土、人民の3つを学習します。政治によってかこわれた「国家」の、この地に立つ「国土」の、「国民」であるこの私が、しとどに汗をかいている。この絞り込み方が、絶妙です。そのためでしょうか、逆もまた真であると思われます。この汗をかいている国民の私は、この国土の主人公であり、この国家の主権者なのだと。
※兵庫県伊丹市の「いたみホール」の玄関です。
「現代俳句」8月号。中学校の社会科では、国を構成する要素として、政治、領土、人民の3つを学習します。政治によってかこわれた「国家」の、この地に立つ「国土」の、「国民」であるこの私が、しとどに汗をかいている。この絞り込み方が、絶妙です。そのためでしょうか、逆もまた真であると思われます。この汗をかいている国民の私は、この国土の主人公であり、この国家の主権者なのだと。
※兵庫県伊丹市の「いたみホール」の玄関です。
2016年8月4日木曜日
広場に燕熊本はこの方位 宇多喜代子
広場に燕熊本はこの方位 宇多喜代子
「俳句あるふぁ」8-9月号。宇多さんは芸術院賞受賞を記念されましたので、本誌にはロングインタビューとともに最新作が掲載されています。広場は、広広とした場所であり、人が多く集まる場所でもあります。そこに燕がやってきました。燕が来ることのうれしさとともに、ある種の「いたたまれなさ」を感じます。それは、巣ではなく広場であるからにちがいありません。このかすかな「いたたまれなさ」は、はるか熊本で被災し、避難所という「広場」で生活せざるを得ない人々へと通じてゆくものです。俳句の書き方をまた一つ教えていただきました。宇多さん、御受賞、たいへんおめでとうございます。
※泉南市埋蔵文化センターでみつけた、お手玉と積み木。
「俳句あるふぁ」8-9月号。宇多さんは芸術院賞受賞を記念されましたので、本誌にはロングインタビューとともに最新作が掲載されています。広場は、広広とした場所であり、人が多く集まる場所でもあります。そこに燕がやってきました。燕が来ることのうれしさとともに、ある種の「いたたまれなさ」を感じます。それは、巣ではなく広場であるからにちがいありません。このかすかな「いたたまれなさ」は、はるか熊本で被災し、避難所という「広場」で生活せざるを得ない人々へと通じてゆくものです。俳句の書き方をまた一つ教えていただきました。宇多さん、御受賞、たいへんおめでとうございます。
※泉南市埋蔵文化センターでみつけた、お手玉と積み木。
2016年8月3日水曜日
見下しても見下しても蟻進みゆく 大牧 広
見下しても見下しても蟻進みゆく 大牧 広
「俳句界」8月号。50句の特別作品に引き込まれ、三度読み返しました。どの句にしようと迷った末、50句の初めに置かれた導入の句を選びました。「見下す」という動詞を俳句で使うことができるんだということに先ず驚きます。大牧さんが蟻を見下ろしているその姿を、「見下しても見下しても」と繰り返すことによって、餌を探し、運んでいく蟻の懸命さが立ち現れます。次にその懸命さを見下す自分自身の残酷さ、無力さが感じとれます。最後に、上から見ていたはずの大牧さんが、蟻と同化してしまうような感覚にとらわれます。なんという技術でしょう。
※夏休みに入った大阪教育大附属天王寺高等学校のグランドです。
「俳句界」8月号。50句の特別作品に引き込まれ、三度読み返しました。どの句にしようと迷った末、50句の初めに置かれた導入の句を選びました。「見下す」という動詞を俳句で使うことができるんだということに先ず驚きます。大牧さんが蟻を見下ろしているその姿を、「見下しても見下しても」と繰り返すことによって、餌を探し、運んでいく蟻の懸命さが立ち現れます。次にその懸命さを見下す自分自身の残酷さ、無力さが感じとれます。最後に、上から見ていたはずの大牧さんが、蟻と同化してしまうような感覚にとらわれます。なんという技術でしょう。
※夏休みに入った大阪教育大附属天王寺高等学校のグランドです。
2016年8月1日月曜日
「緑さす」17句 岡田耕治
「緑さす」 岡田耕治
緑さす子の高さまで屈みけり
シャツが身に張り付いてくる夏の川
夏山を下りゆく尻をはずませて
ストローを通る赤色かき氷
老人と鳩の公園日盛りぬ
夏座敷ままならぬこの膝頭
頭から汗を流して飯を喰う
人情と名のつく市場夏夕べ
早く読むことをせぬ書の青葉木菟
酒買いに行ったままなり夏の星
天瓜粉這わせた首を見つめらる
裏道の方が広がり朝の蝉
画面から離れて居たり青岬
食べてすぐ歩き出したる鰻かな
ゆっくりと汗を出すよう歩きけり
秋迫る展望台に長く居て
蜻蛉の水辺をともに歩くこと
※私の原点・岬町小島の風景です。
緑さす子の高さまで屈みけり
シャツが身に張り付いてくる夏の川
夏山を下りゆく尻をはずませて
ストローを通る赤色かき氷
老人と鳩の公園日盛りぬ
夏座敷ままならぬこの膝頭
頭から汗を流して飯を喰う
人情と名のつく市場夏夕べ
早く読むことをせぬ書の青葉木菟
酒買いに行ったままなり夏の星
天瓜粉這わせた首を見つめらる
裏道の方が広がり朝の蝉
画面から離れて居たり青岬
食べてすぐ歩き出したる鰻かな
ゆっくりと汗を出すよう歩きけり
秋迫る展望台に長く居て
蜻蛉の水辺をともに歩くこと
※私の原点・岬町小島の風景です。
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