上巻をとばし下巻へ新樹の夜 渡邉美保
ゆっくりと文体を味わいながら読みたい本。さき頃亡くなった古井由吉の小説などは、飛ばして読んだりはしません。一方、推理小説などは、早く結末が知りたくて上巻を読み飛ばして、下巻に移ることがあります。まして新樹の夜であれば、心がはやります。
合格圏 岡田耕治
台風の進路の変わる貨物かな
シーツ広げ秋の風鈴揺らしけり
石仏やコスモスのほか何もなく
お帰りと書き置きのある蒸かし芋
葉鶏頭しばらく子ども授かりぬ
秋夕焼すぐに濁ってしまうああ
蔦かずら合格圏に入りたる
無記名の手紙が届き蓮の実
真っ直ぐに桜紅葉のはじまりぬ
松手入根っこの力感じおり
もう少し電車にいたい秋の暮
忘れては思い出せない菌かな
祈る形 岡田耕治
初めてのバスを待ちたる木の実かな
眼差しを覗かれてあり月明り
澄む水やかき混ぜたくてしょうがない
秋簾しばらく坐りいることに
本当は倒れていたい曼珠沙華
花野より立つときの来る光かな
蟷螂や祈る形をしていたる
人騒ぎここに聞こえて小望月
裂けるため包まれている石榴かな
触らずにふれんとしたり猫じゃらし
城の水澄みて虚空を映しけり
ジーンズを履きたくなりしいわし雲