2026年8月9日日曜日

一歳へ裸の乳に文字を描く 宮崎義雄

〈俳句物語〉 岡田耕治

一歳へ裸の乳に文字を描く 宮崎義雄


妻)ねえ、この胸に絵を描いてくれない?

夫)え、どうして? サプライズ?

妻)ううん、今日で最後にしたくて……。もう、おっぱいを卒業させてあげたくて。

夫)なるほどね。何を描けばいい?

妻)顔かな。「へのへのもへじ」なら、この子も笑ってくれるかも。

夫)わかった。じゃあ、とびきり愉快な顔を描くよ。

妻)ひゃあ、筆が冷たい。

妻)じゃあ、ちょっと抱っこしてみるね。

夫)どう? びっくりしてるかな。

妻)だめみたい。この子にとっては一番安心できる場所なんだね。ほら、口の周りが真っ黒になっちゃった。

夫)ほんとだ。あーあ、鼻まで真っ黒。

妻)ねえ、明日はお酢を塗ってみようかな。

夫)そこまでしなくても……。

妻)でも、育休も終わるしね。一歳になるってことは、そういうことなんだよね。少し、寂しいけど。

夫)そうだね。今夜は、この真っ黒な顔のまま、たっぷり甘えるか。


一歳へ裸の乳に文字を描く 宮崎義雄



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