*豪雪の福島県只見町、雪の中でこんな手芸が誕生。
毛糸編む私自身に戻るため 砂山恵子
「香天」50号・香天集選後随想。自分が確かにここに居ること、それを実感することが難しい時代になりました。子どもたちを見ても、私の子ども時代は、海に打ち上がった流木を切って割って、風呂の薪にするというのが私の仕事でした。黙々と一人でこなす仕事ですが、人への貢献が手に取って実感できました。今の子どもたちは、例えばSNSを介してどう友だちとつながるかに心を砕きながら、一人になる時間を持てなくなっています。だから、自分自身を実感できにくい。毛糸を編むということは、時空を超えてどこまでも広がる拡大と、自分が目指すイメージに形を統一していく収束と、両方の意味があるにちがいありません。静かな拡大と収束が、私を確かなものにしてくれるのです。恵子さんは、「すごく落ち込んだ時に毛糸を扱う」と、落ち着いてくるとのこと。いくつになっても、一人になる時間は必要です。
2017年12月31日日曜日
かなかなかなかな詩はふんだんな無駄 玉記玉
かなかなかなかな詩はふんだんな無駄 玉記玉
「香天」50号香天集選後随想。カナカナと鋭い声が森に響き渡ります。仲寒蝉さんは、この圧倒的な声を高野山で聞いたことが、ご自分の「詩」の原体験になっていると仰っていました。「かなかなかなかな」とカナカナを連続させているところに、高野山ならずとも、森全体からこの身体にまで響き渡る蜩を感じることができます。それは、「詩」に通じ、「詩」は虚業=無駄に通じます。しかし、中途半端な無駄ではなく、「ふんだんな無駄」と言われると、寒蝉さんの原体験に通じるような、肯定感が生まれてきます。この「ふんだんな無駄」の中で生きて行こうとさえ思えるのです。玉さんのこの肯定に感謝。
*8月、大阪教育大学柏原キャンパスから。
「香天」50号香天集選後随想。カナカナと鋭い声が森に響き渡ります。仲寒蝉さんは、この圧倒的な声を高野山で聞いたことが、ご自分の「詩」の原体験になっていると仰っていました。「かなかなかなかな」とカナカナを連続させているところに、高野山ならずとも、森全体からこの身体にまで響き渡る蜩を感じることができます。それは、「詩」に通じ、「詩」は虚業=無駄に通じます。しかし、中途半端な無駄ではなく、「ふんだんな無駄」と言われると、寒蝉さんの原体験に通じるような、肯定感が生まれてきます。この「ふんだんな無駄」の中で生きて行こうとさえ思えるのです。玉さんのこの肯定に感謝。
*8月、大阪教育大学柏原キャンパスから。
香天集12月31日 渡邉美保、砂山恵子、久堀博美ほか
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
香天集12月31日 岡田耕治 選
渡邉美保
海鳴りや布団の中にある昔
風邪兆す沓脱石をどけてより
霜晴や穂高連峰遭難碑
レノン忌の空の青さに開く窓
砂山恵子
毛糸編む私自身に戻るため
空き瓶を集める遊び風冴ゆる
貼りついた木の葉ひとつを裏返す
枯野から枯野へ渡る橋ひとつ
久堀博美
初時雨一人で行けるところまで
凩や睡眠薬の甘く溶け
車なき車庫に冬日の満ちきたる
粕汁の隠されている熱さかな
森谷一成
てのひらの海におぼれる開戦日
指に出会う八十八鍵六林男の忌
太公望のはらわたに入り薬喰
充血の女が眠りクリスマス
橋本惠美子
鳥渡るタンクローリーの発光
寒風を視つめていたり遠眼鏡
木枯や外れ馬券を散り散りに
フルフェイスの覚悟を固め冬の朝
大杉 衛
冬構え奥にかすかな波の音
白鯨も船長もみなばね仕掛け
方舟の上こそ枯野漂えり
手の届く棚には何もない師走
久堀博美
寒鴉水道管がむき出しに
神無月大きな雲が飛んでゆく
何時になく機嫌が良くて大海鼠
膝毛布腰まで包み志す
澤本祐子
人の世を高くしてあり松手入れ
湯に浮かぶ柚子胸元に近づきぬ
木漏れ日をすり抜けていく木の葉かな
戻り反故戻る音して十二月
釜田きよ子
青春の眼差しにして裸木は
数え日や二十四時間あるにはある
浮寝鳥ワルツを踊る夢を見て
不揃いも良し丸餅の自己主張
橋本惠美子
七回を跳んで捕まえ飛蝗かな
万年と言われ亀死す冬日向
海鳥の足首細し初時雨
祭笛肩で涙を拭いたる
安部礼子
雪見酒この足跡の埋まるまで
揺るることf分の1聖夜の灯
帰り花乙女に帰る約束す
つながってそれでもひとり雪螢
香天集12月31日 岡田耕治 選
渡邉美保
海鳴りや布団の中にある昔
風邪兆す沓脱石をどけてより
霜晴や穂高連峰遭難碑
レノン忌の空の青さに開く窓
砂山恵子
毛糸編む私自身に戻るため
空き瓶を集める遊び風冴ゆる
貼りついた木の葉ひとつを裏返す
枯野から枯野へ渡る橋ひとつ
久堀博美
初時雨一人で行けるところまで
凩や睡眠薬の甘く溶け
車なき車庫に冬日の満ちきたる
粕汁の隠されている熱さかな
森谷一成
てのひらの海におぼれる開戦日
指に出会う八十八鍵六林男の忌
太公望のはらわたに入り薬喰
充血の女が眠りクリスマス
橋本惠美子
鳥渡るタンクローリーの発光
寒風を視つめていたり遠眼鏡
木枯や外れ馬券を散り散りに
フルフェイスの覚悟を固め冬の朝
大杉 衛
冬構え奥にかすかな波の音
白鯨も船長もみなばね仕掛け
方舟の上こそ枯野漂えり
手の届く棚には何もない師走
久堀博美
寒鴉水道管がむき出しに
神無月大きな雲が飛んでゆく
何時になく機嫌が良くて大海鼠
膝毛布腰まで包み志す
澤本祐子
人の世を高くしてあり松手入れ
湯に浮かぶ柚子胸元に近づきぬ
木漏れ日をすり抜けていく木の葉かな
戻り反故戻る音して十二月
釜田きよ子
青春の眼差しにして裸木は
数え日や二十四時間あるにはある
浮寝鳥ワルツを踊る夢を見て
不揃いも良し丸餅の自己主張
橋本惠美子
七回を跳んで捕まえ飛蝗かな
万年と言われ亀死す冬日向
海鳥の足首細し初時雨
祭笛肩で涙を拭いたる
安部礼子
雪見酒この足跡の埋まるまで
揺るることf分の1聖夜の灯
帰り花乙女に帰る約束す
つながってそれでもひとり雪螢
2017年12月25日月曜日
「数え日」14句 岡田耕治
数え日 岡田耕治
数え日のよく見えている石と空
煤逃の身を乗り出していたりけり
もういいと声のしている毛布かな
待っており時雨の窓に近づいて
霜の夜ゆっくり速く辞書を繰る
幾度も寝返りを打ち白障子
極月の大きな橋へ歩き出す
数え日の誰も乗らなくなる木馬
アクセルを踏み込んでゆく落葉かな
白息に向かい各各出勤す
目を閉じて声出しており冬の海
雪うさぎ途中でやめることにする
日光をのんびり含み冬の雲
大焚火透明になることのあり
*京都嵐山にて。
2017年12月24日日曜日
香天集12月24日 玉記玉、谷川すみれ、三好広一郎ほか
香天集12月24日 岡田耕治 選
玉記 玉
年惜しむジャムは静かに傾いて
一頭の凍蝶黒々と花押
セーターに口まで浸かり石である
クリスマスつんと発泡スチロール
谷川すみれ
ふらここが行方不明になりにけり
ひりひりと鳴くすずめの子からすの子
梅香る異国の人の骨格に
お話のつづきはあした藤の花
三好広一郎
意見とは丸と三角冬帽子
まっすぐの煙のどこが十二月
冬眠の蛇を踏んでる玉子焼き
数学の板書きを消す冬の虹
橋爪隆子
霜月のスリッパの癖強くなる
溜息も呼吸の一つ十二月
着ぶくれて口の体操しておりぬ
水鳥の水を纏いて水を脱ぐ
三好つや子
手で縫いしざぶとんにいて冬の雲
十二月八日の首がコキと鳴る
ユトリロの白の仔細や冬の壁
黒豆に第九を聴かせ煮ておりぬ
辻井こうめ
赤南天白南天とひびきあひ
鈍色の冬濤川を溯る
大川の流れのままに朴落葉
湯気の窓こすりて冬の海を見る
古澤かおる
帰らぬとしゃがみ込む犬息白し
クリスマスパン屋のドアの鈴鳴らす
メアリーの紅茶の時間シクラメン
長靴と木箱を濡らし寒の水
永田 文
真青なる空を引っ掻く鵙の声
からす瓜枯れゆくままにしていたる
青空の深きに触れて風花よ
木枯や誰かこととうことにする
木村博昭
開帳の秘仏は昏し大根焚
遠く来て山枯色となりにけり
開戦日手旗で車止めてあり
マフラーや暮れて賑わう街に出る
中辻武男
ゆっくりと旭日の昇る鴨の声
各各の道行く人の息白し
宅配の声諭すなり年の暮
散髪の後の首なり寒波来る
越智小泉
悴んでいることならずあれもこれも
己が影水面に預け山眠る
歩けるは嬉し風花見しあとも
干蒲団今夜はどんな夢を見る
村上青女
長袖を竿に通して秋日和
押花展見てから帰る草紅葉
跳ね返る石音高し石工の冬
静かなる冬満月にペダル踏む
*京都嵐山にて。
玉記 玉
年惜しむジャムは静かに傾いて
一頭の凍蝶黒々と花押
セーターに口まで浸かり石である
クリスマスつんと発泡スチロール
谷川すみれ
ふらここが行方不明になりにけり
ひりひりと鳴くすずめの子からすの子
梅香る異国の人の骨格に
お話のつづきはあした藤の花
三好広一郎
意見とは丸と三角冬帽子
まっすぐの煙のどこが十二月
冬眠の蛇を踏んでる玉子焼き
数学の板書きを消す冬の虹
橋爪隆子
霜月のスリッパの癖強くなる
溜息も呼吸の一つ十二月
着ぶくれて口の体操しておりぬ
水鳥の水を纏いて水を脱ぐ
三好つや子
手で縫いしざぶとんにいて冬の雲
十二月八日の首がコキと鳴る
ユトリロの白の仔細や冬の壁
黒豆に第九を聴かせ煮ておりぬ
辻井こうめ
赤南天白南天とひびきあひ
鈍色の冬濤川を溯る
大川の流れのままに朴落葉
湯気の窓こすりて冬の海を見る
古澤かおる
帰らぬとしゃがみ込む犬息白し
クリスマスパン屋のドアの鈴鳴らす
メアリーの紅茶の時間シクラメン
長靴と木箱を濡らし寒の水
永田 文
真青なる空を引っ掻く鵙の声
からす瓜枯れゆくままにしていたる
青空の深きに触れて風花よ
木枯や誰かこととうことにする
木村博昭
開帳の秘仏は昏し大根焚
遠く来て山枯色となりにけり
開戦日手旗で車止めてあり
マフラーや暮れて賑わう街に出る
中辻武男
ゆっくりと旭日の昇る鴨の声
各各の道行く人の息白し
宅配の声諭すなり年の暮
散髪の後の首なり寒波来る
越智小泉
悴んでいることならずあれもこれも
己が影水面に預け山眠る
歩けるは嬉し風花見しあとも
干蒲団今夜はどんな夢を見る
村上青女
長袖を竿に通して秋日和
押花展見てから帰る草紅葉
跳ね返る石音高し石工の冬
静かなる冬満月にペダル踏む
*京都嵐山にて。
2017年12月20日水曜日
舌の上に渋茶のこれる卯波かな 桂信子
宇多喜代子『この世佳し —桂信子の百句』(ふらんす堂)より。その作家の傍にいた人の言葉が、何よりその人のことを伝えるということがあります。この一冊は、まさに桂信子という作家を宇多喜代子さんの眼差しから味わうことができます。中でも、掲句の鑑賞に驚きました。〈桂信子は、幼児のころから父上の茶の相手をして大人と同じ茶をそこそこの銘のある茶碗で作法に則って飲んでいた。父上は幼い子どもをあなどることなく、道具や軸、設えなどを惜しみなく見せていた。そんな習慣のお蔭でか、子ども時代から茶になじみ、「いいもの」を直感で探し当てる眼を持っていた。〉
この文章によって、桂信子さんの本質が、ストンと私の中に入ってきました。宇多喜代子さん、御出版おめでとうございます。
*宇多さんの地元である池田市ほそごう学園の子どもたちの作品。
この文章によって、桂信子さんの本質が、ストンと私の中に入ってきました。宇多喜代子さん、御出版おめでとうございます。
*宇多さんの地元である池田市ほそごう学園の子どもたちの作品。
2017年12月18日月曜日
「冬薔薇」15句 岡田耕治
冬薔薇 岡田耕治
煤逃の時時顔をさすり居る
のんびりと取りに戻りし冬帽子
外套を着て方針の決まりけり
冬薔薇の束が行ったり来たりする
話し出すタクシー運転手の師走
六林男忌の骨が地面を叩きけり
鯛焼を受け取るまでの会話にて
マラソンの小さなリュックサック鳴る
四人なることを愉しむ囲炉裏かな
凩がプラスチックを陽気にす
焼酎を割る一差しの冬の水
分析を愉しんでおり牡蠣フライ
パンを打つ音を漏らして冬灯
セーターの胸を大きく開きけり
日中まで眠る日のあり干蒲団
*書家の下阪大鬼さんが、私の作品を書いてくれました。
2017年12月17日日曜日
香天集12月17日 石井冴、中嶋飛鳥、加地弘子ほか
香天集12月17日 岡田耕治 選
石井 冴
地下道の速度の中を六林男の日
手袋に手を入れ五分先のこと
着ぶくれの中でゆっくり血のめぐり
太陽まで届く回転木馬かな
中嶋 飛鳥
一つ得て一つを捨てる十二月
O型の男海鼠を苦手とす
登校の声を散らして霜の花
冬深みたり常温のペンと紙
加地弘子
寒林や人には会いませぬように
凍雲も地球も動く気配なし
冬薔薇一歩手前でほどけたる
冬の雲しきりに笑う目と口と
前塚嘉一
極月の猫がこだわりマンホール
口パクに表情をつけ十二月
道化師を模写していたり年賀状
悴みてグランドゴルフ遊びかな
*昨日、上六句会を行ったホテルにて。
石井 冴
地下道の速度の中を六林男の日
手袋に手を入れ五分先のこと
着ぶくれの中でゆっくり血のめぐり
太陽まで届く回転木馬かな
中嶋 飛鳥
一つ得て一つを捨てる十二月
O型の男海鼠を苦手とす
登校の声を散らして霜の花
冬深みたり常温のペンと紙
加地弘子
寒林や人には会いませぬように
凍雲も地球も動く気配なし
冬薔薇一歩手前でほどけたる
冬の雲しきりに笑う目と口と
前塚嘉一
極月の猫がこだわりマンホール
口パクに表情をつけ十二月
道化師を模写していたり年賀状
悴みてグランドゴルフ遊びかな
*昨日、上六句会を行ったホテルにて。
2017年12月15日金曜日
五指をもて寒鰤千を競り落とす 今村征一
五指をもて寒鰤千を競り落とす 今村征一
「九年母」12月号招待作品。年の市の賑わいが伝わってくる征一さんの5句に出会いました。5本の指を絶えず動かしながら後から後から鰤を競り落としていく、そんな市場を生き生きと書いておられます。白い息から出てくる人々の声、打たれた水や魚の匂い、ジャンパーをすり合わせて動いてゆく冷たさ、そんな色々なことが感じられる一句です。優れた写生句は、このように私たちの五感を刺激してくれるのですね。
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
「九年母」12月号招待作品。年の市の賑わいが伝わってくる征一さんの5句に出会いました。5本の指を絶えず動かしながら後から後から鰤を競り落としていく、そんな市場を生き生きと書いておられます。白い息から出てくる人々の声、打たれた水や魚の匂い、ジャンパーをすり合わせて動いてゆく冷たさ、そんな色々なことが感じられる一句です。優れた写生句は、このように私たちの五感を刺激してくれるのですね。
*大阪教育大学天王寺キャンパスにて。
2017年12月11日月曜日
「開戦日」12句 岡田耕治
開戦日 岡田耕治
足温め時を一つにしていたる
老いてゆく光の中の冬雲雀
焚火育つ用の終わった人のため
マフラーや行き先をふと失いし
建物の古きを選び冬の蝶
人の目に包まれている十二月
熱燗や思い出少し書き直す
開戦日赤信号に染まりたる
実行に移していたり革手袋
思い出すため湯豆腐を囲みたる
絶対に濡らさぬように行く時雨
中華鍋鳴らして冬を揺らしけり
*大阪梅田の太融寺の芭蕉句碑。
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