2017年1月24日火曜日

ヴァレンタインデー傘がまだ濡れてゐる 片山由美子

ヴァレンタインデー傘がまだ濡れてゐる 片山由美子
「俳句四季」2月号。ヴァレンタインデーに逢うことになりましたが、あいにくの雨でいつものコースを散策しながら話すわけにはいかず、取りあえずいつもの店に入りました。前菜とパスタとワインを注文してひととき、でもまだ傘は濡れているようです。このまま、この店に居ることにするか、傘を差して別の場所に移るか、濡れた傘は二人の時間をうながしているようです。
*大阪教育大天王寺キャンパスの水溜まり。雨は上がりました。

2017年1月23日月曜日

「雪晴」12句 岡田耕治

雪晴 岡田耕治

一斗缶蹴りし火の粉の焚火かな
雪つけて朝日を浴びて入室
鉛筆と紙と息立て大試験
雪晴の朝から風呂を沸かしけり
湯上がりの指が抓みし冬林檎
雪原を渡ってゆけり風の息
枯蓮を切り揃えたる明るさよ
カウンターの内と外にて春を待つ
最後にするから熱燗はもっと熱く
我が身から離れんとして風邪の熱
毛糸帽脱ぎたる声を近くにす
二階から脳天を見る寒暮かな


*大阪教育大学天王寺キャンパスの写真展。「識字のこれまで、いま、これから」の題字を書かせてもらいました。

2017年1月22日日曜日

香天集1月22日 谷川すみれ、橋爪隆子、古澤かおる

香天集1月22日 岡田耕治 選

谷川すみれ
きょうだいの一番先に入学す
白梅を離れぬ男見ておりぬ
春雨の色が溢れておりにけり
音立てて春の日暮をロックする

橋爪隆子
薄墨をにじます便り十二月
人日の人を吸い込む改札機
寒波来るホッチキスの針紙をかみ
裸木の裏も表もなき真昼

古澤かおる
事務始め古い鋏で封を切り
初鴉の遊ぶ鳥居は八代目
人日や家のタオルに日の当たり
人の日の葛根湯の副作用

*大阪市内にある一心寺。

2017年1月21日土曜日

枯葉降る星降る放射能も降る 高野ムツオ

枯葉降る星降る放射能も降る 高野ムツオ
「俳句四季」2月号。枯葉が風にあおられてしばらく空中にあり、元の樹よりも遠くへ散ってゆきます。枯葉が教えてくれた夜空を見上げますと、たくさんの星が光り輝いています。輝く星を「降る」と感じる感性には、目に見えない放射能も降るように感じられるのです。2月号巻頭の3句、3句しかない空間に、私たちの、ということはこの国の現実を糺そうとする言葉が配されています。
*ムツオさんから届いた葉書。ネット上の鑑賞文を読んでくださって、このブログで取り上げた句を染筆してくださいました。宝物にします。

2017年1月20日金曜日

思い出のほかには何も無い二月 津沢マサ子

思い出のほかには何も無い二月 津沢マサ子
「俳句α」2-3月号。コメントには、「齢を重ね」「いま振り返ってみると、過ぎ去った日は影絵のように心の中をさまよっている」とあります。歳とともに、現実を生きながら、思い出の中にも生きている、そんな重層性が出てきます。亡くなった人と対話したり、出かけた場所を再訪したり、思い出の中はどんどん豊かになってくるのです。「思い出のほかには何も無い」と聞くと、若い人は「かわいそう」と想うかも知れませんが、いえいえ決してそんなことはありませんよ。寒い二月になりそうです。寒い現実はほどほどにして、影絵の躍動する思い出の中に遊ぼうではありませんか。
*たこ焼き割烹「たこ昌」竹粋亭(堺市・鳳店)

2017年1月19日木曜日

光あれば翳過ぎやすし春の芝 寺井谷子

光あれば翳過ぎやすし春の芝 寺井谷子
「俳句α」2-3月号。待っていたように春の句が目に飛び込んできました。よく刈り込まれた春の芝、その全面に日光が当たっています。それがあまりにも完全な日向なので、鳥であっても雲であっても、「翳(かげ)」はくっきりと過ぎていきます。「過ぎやすし」という表現には、翳が生まれ、過ぎることをも愉しんでいる谷子さんのまなざしが感じられます。
*大阪教育大学柏原キャンパス。

2017年1月17日火曜日

「寒の水」18句 岡田耕治

寒の水 岡田耕治

真っ先に居酒屋へ着き仕事始
一つずつ話の変わる風呂吹よ
トーストに紅茶を蒸らす七日かな
次に会う日時の決まり初暦
焼香に包まれており日脚伸ぶ
できたことばかりを並べ初日記
減らすだけ減らしてしまい初鏡
柚子の実に焼鳥の皮香りけり
それからの音聴いている日向ぼこ
初夢や人に何度も話したる
ワイパーを付けずに散らし寒の雨
退職の時が育てる大根かな
飲む前に飲み一杯の寒の水
寒の水その中に眼を置いてくる
鋤焼やぐつぐつと鳴るほどにして
新海苔や口内が荒れ始めたる
ワックスを掛けそれからの時雨かな
羽蒲団強く力を入れて抱く
*天王寺からの月。