2017年5月24日水曜日

立夏かな巨船迎へに艀行く 森岡正作

立夏かな巨船迎へに艀行く 森岡正作
「俳句四季」6月号。艀(はしけ)は、字の中に浮くが入っているように、身軽に湾の中を走ることができます。大きな船を誘導するために、初夏の海を浮くように白波を立てて進むボート。どんな大きな船も、ここでは艀の指示に従います。このような爽やかさを、「わが道を行く」自選40句とともに味わいました。
*昨日、大阪狭山市内の教職員向けに「俳句づくり」の授業をしました。

2017年5月23日火曜日

巣の燕しずか私も静かにす 池田澄子

巣の燕しずか私も静かにす 池田澄子
「俳句四季」6月号。朝から燕のヒナが鳴き合いながら餌を求めていましたが、午後からは静かになりました。ヒナたちは眠っているのでしょう。親燕は近くでその様子を見ているのかもしれません。私たちが生きていくためには、活動して音を立てることも必要ですが、こうして静かにする時間も必要です。澄子さん、それを燕の巣が教えてくれるのですね。
*岬町小島にて。

2017年5月22日月曜日

「白墨」12句 岡田耕治

白墨   岡田耕治

麦の波うねる速さを保ちたる
元気あり最後にパセリ食べるほど
どこまでも百足虫百足虫になり続け
玉葱を吊すと生まれ風と影
灯をともす青葉の中のサキソフォン
夏の夜の夢を短く辿りけり
それぞれの風に名のあり夏の川
夏燕一羽のときを愉しめり
炎昼を切り抜いており旗の陰
黒日傘眼に力戻りくる
日焼顔帽子を強く被りけり
白墨の字のすべりよき五月かな
*「がんこ」阪急東通り店。

2017年5月21日日曜日

香天集5月21日 谷川すみれ、大杉衛、永田文ほか

香天集 岡田耕治 選

谷川すみれ
若者の離れられない椎若葉
黄や緑赤青小豆かき氷
子を産みし臀を置きたる梅雨の晴
神仏に会ったことなし水を打つ

大杉 衛
風車くるまは廻る水車
花菖蒲束ねうれしき重さかな
翳もたず翳となりたる黒揚羽
麦秋や深い呼吸という礼儀

永田 文
渓からの風をとらえて著莪の花
葱坊主集団下校はじまりぬ
風五月少女の膝の絆創膏
野の宴ぺんぺん草の高くなり

竹村 都
葬の列桜吹雪が送りゆく
腕白のおとなしくして入学す
黄の帽子並び行くなり芝桜
百歳の通夜の灯りや花杏

安部礼子
ぬかるみを抜けていく音ソーダ水
犬死のあと葉桜の青い空
荒梅雨が地骨を洗う名無垈
霊験に雷を呼ぶ般若面

*四天王寺、石舞台。

2017年5月20日土曜日

戦争の話終わらぬ夜の滝 渡辺誠一郎

戦争の話終わらぬ夜の滝 渡辺誠一郎
「俳句あるふぁ」6・7月号。昼間も同じように滝は水を落としていますが、夜になるとその音は一層際立ってきます。辺りが静まり、夜の空気が鮮明になってくるからでしょう。鈴木六林男師と夜更けまで飲んでいますと、どんどん戦争の話が出てきました。六林男師はヘミングウェイの言葉を引きながら、飲んで益々鮮明になり、戦場をそして戦争を語りました。渡辺さんを鮮明にさせているのは、東日本大震災に他なりません。そこでは、昔話としての戦争だけではなく、迫り来るものとしての戦争が語られているにちがいありません。
*四天王寺の伽藍。

2017年5月19日金曜日

父の日の大きな夕日見てをりぬ 橋場千舟

父の日の大きな夕日見てをりぬ 橋場千舟
句集『ひとひら』半夜俳句会。母の日が近づいてくると母を、父の日が近づいてくると父を思います。今だったら、何をプレゼントしようかと仕向けられていますが、一番のプレゼントは母に、父に会いに行くことでしょう。もちろん、亡くなっていたとしても、会いに行くことは可能です。例えばこの句のように、「大きな夕日」を見ることで、父に会うことができるにちがいありません。千舟さん、ご出版おめでとうございます。
*大阪教育大学天王寺キャンパス。

2017年5月17日水曜日

いつまでも何にもしない雨蛙 山口昭男

いつまでも何にもしない雨蛙 山口昭男
句集『木簡』青磁社。作者の目が雨蛙と捉えました。しばらく眺めていますが、こちらを見たまま動こうとしません。そうか、この雨蛙のように、命というのはそこに在るだけでいいのだと思えてきます。傘をさして、急いで目的地にゆくのではなく、このように蛙につき合おうとする、作者の静かな志が伝わってくる句集です。御出版、おめでとうございます。
*大阪狭山市立南第一小学校。