2019年12月29日日曜日

「ロングブーツ」10句 岡田耕治

ロングブーツ  岡田耕治

磨かれたドアノブにある冷たさよ
数え日のこの実一つを含みけり
世間から社会にわたる焚火かな
にぎやかに来て寒紅を引きはじむ
冬座敷ここを上座とすることに
六林男忌の眼に力入れて視る
先生の句を繰ってゆく枯野行
人参を砕く音させ朝っ腹
ロングブーツ門限までに帰りたる
院長と副院長の日向ぼこ

2019年12月21日土曜日

香天集12月22日 柴田亨、辻井こうめ、橋本惠美子ほか

香天集12月22日 岡田耕治 選

柴田 亨
赫赫と闇に溶け行く十二月
空白は夢の大きさ新手帳
ハヤブサを狙う三脚冬日向
猫といて欠礼はがき確認す


辻井こうめ
落葉踏む櫟林の愉しけれ
結球す時計回りの冬菜かな
風を聴く座禅道場散紅葉
あたたかい色の灯りや年用意


橋本惠美子
クマムシが先に住みたり後の月
昨日より明日を選び神渡
首のない鶏走る年の暮
点灯の瞬間を待つ懐炉かな


中濱信子
桃一つ二人で食すことにする
金木犀噂話のひろがりて
文化の日郵便受けに「俳句四季」
木守柿昏れ残りたるひとところ


岡田ヨシ子
ゆっくりとひょうたん南瓜色深む
一年を迎う結婚日向ぼこ
冬帽子白髪をかくすために編む
千両を根づかせている土のあり


今日・明日と若い教職員と合宿に入りますので、
一日早いですが、アップします。
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
 

2019年12月16日月曜日

「新作」10句 岡田耕治

新作  岡田耕治

枇杷の花見える位置にて省察す
ひと息に色の衰え石蕗の花
白菜の柔らかくなる円居かな
月曜の朝一番の着膨れ
言うことを聞かぬ眼の耳袋
燗熱し監督が来る前に飲み
冬日向倍速にして本を聴く
映像の角度が決まり木守柚子
忘年の出汁巻玉子焼き上がり
新作に集まっている十二月

2019年12月15日日曜日

香天集12月15日 安田中彦、渡邊美保、澤本祐子ほか

香天集12月15日 岡田耕治 選

安田中彦
抽斗に狼のゐる至福かな
夢と知る夢のなかなる小白鳥
クリスマスあき箱に猫入りたがる
ただよふは冬の菫の独語かな

渡邉美保
冬青空カシンカシンと杭を打つ
茶の花の金の蘂まで飛んでゆく
冷ややかや顔認証で開くゲート
晩秋の救急箱に足すガーゼ

澤本祐子
つややかに色みちゆきて実むらさき
ていねいに林檎をむいて聞き上手
思うこと思い出すこと新松子
話すことつぎからつぎへ石蕗の花

神谷曜子
冬蝶になれるか免許返納す
冬の月考え事をするウサギ
界隈に反則多く寒鴉
思い切り弯曲をして寒のヨガ

中辻武男
牙彫柿本物よりも柿らしく
里の味蜜柑仕分けの影浮かぶ
早や師走宅配人の声高く
甲斐ありて寒蘭老いを潤せり
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。

2019年12月8日日曜日

香天集12月8日 三好つや子、砂山恵子、橋爪隆子ほか

香天集12月8日 岡田耕治 選

三好つや子
言霊の塒としての烏瓜
動物園に昼のない顔冬に入る
はにかみを深める遺影冬りんご
着ぶくれて私自身を俯瞰する

砂山恵子
黒潮を目指す寒夜の魚たち
海溝に鱗広がる霜夜かな
言霊を谷に潜めて山眠る
鈍色の雨の降る夜春着縫ふ

橋爪隆子
半ぺんの疲れ切ったるおでんかな
着ては脱ぎ脱いでは着けて十一月
夕暮を抜け出している石蕗の花
柿の竿空つついたりひねったり

宮下揺子
冬帽子北から戻り北へ行く
祭神は木彫りの「おかめ」一の酉
涙腺の緩い夫なり玉子酒
クリスマス美術館にて再会す

羽畑貫治
今年こそ禁酒を誓う大旦
にっこりと太師の笑顔葛晒す
寒月光明日へと出す力瘤
春近し一直線に齢重ね
*高槻市にて。

2019年12月7日土曜日

「睡眠中」12句 岡田耕治


睡眠中  岡田耕治

学校を飛び出している銀杏落葉
枯芭蕉これからをなお面白く
音立てて育ってゆけり冬の水
返り花心拍数を減らしけり
寒風の鼻から分けて縄暖簾
いくらでも時間を使う炬燵かな
木枯をゆっくりと茶葉沈みけり
生きることだけを考え冬の滝
抱き合っているだけでよき時雨かな
冬の蝶睡眠中に現れて
冬晴の光は命つつまれる
薬箱囲炉裏から手の届かない


2019年12月1日日曜日

香天集12月1日 玉記玉、森谷一成、夏礼子、西本君代ほか

香天集12月1日 岡田耕治 選

玉記 玉
随筆(エッセー)か小説(ノベル)か足袋を洗うのは
試すには梟の顔ずれている
蛇は穴に象形文字に関節
マスクしてみるキリンの首の暗さ

森谷一成
世間(よのなか)を短く飛んで石たたき
大和三山そのまんなかの秋深む
蓑虫われに極刑を冀い
冷まじやどれも百円プラス税

夏 礼子
ふるさとを近づけている月明り
足音の親しくなりぬ十三夜
闇新た金木犀の雨あがり
ひとり居の水つかう音秋深む

西本君代
袴着の男子をあやす写真館
毬栗の毬要る人は五十円
黄落や珈琲たてる男の手
冬近し胎動を聞く掌

橋本惠美子
十月をねぎらっておりフルコース
ハーレーを降り立つ女菊日和
立ち話す影をうつして冬菫
アダージョとラルゴの狭間冬の水

中嶋紀代子
ギブアンドギブをつづけて冬銀河
短日や帰宅時刻のメール来る
ペポかぼちゃ夜中にタンゴ踊るらし
認知症の夫持つ友の富有柿

釜田きよ子
ホチキスの乾いた音や秋暑し
温暖化知るや知らずや秋の蝶
蟷螂の膝しなやかに使いけり
文化の日レシピ通りにせぬ料理

北川柊斗
冬陽ざしテラスに並ぶハーヴティー
冬日受く老犬ねむる小さき屋根
蛇口より切れぬ雫や冬の鵙
ふつふつと我慢限界たうがらし

坂原 梢
竜の玉子のポケットをこぼれ出づ
平凡が良いことになる夜長かな
柚子刻むほどに香りの増しゆけり
木枯の今も瓦礫は町の中

北村和美
夕刊の痩せてゆくなり日短か
ピンホールカメラ瞬く冬の星
初時雨パズルのかたちして落ちる
返り花ふみの余白の白薫る

正木かおる
田園は少しさみしく鳥肥ゆる
黄落や墨の作務衣の忙しく
二度となき今日一日の梨を剥く
冬ざれの港を離れプリンセス

安部礼子
カメラのレンズ小春日を持ち帰る
黒電話置き寒紅を見てしまう
腸の細胞として雪仏
炎の色は寒の夜を無限にす

吉丸房江
抱き上ぐる子が甘柿に届くまで
友招き山茶花の咲く今が好き
茶の花の心底黄色あたたかく
首かしげクリスマスローズ聴き上手
*伊丹市柿衞文庫にて。