観自在雨蛙いま雨の中 星野昌彦
「景象」108号。「般若心経」と題された26句の1句。「観自在」とは、すべての事物を自由自在に見ることができること。雨が降り出して、その中にいる雨蛙の、生き生きとして様子が目に浮かんできます。「ああ、おれはこの雨をまったいたんだぜ」と、工藤直子さん流にセリフを作ってみたくなります。「何もかも見えなくなるほど降るがいい。降れば降るほど、おれは雨蛙になるんだぜ」。
*大阪府教育委員会主催の地域コーディネーター研修会で、話をしました。
2016年9月14日水曜日
2016年9月13日火曜日
水底は水の重さの梅雨入かな 渡辺誠一郎
水底は水の重さの梅雨入かな 渡辺誠一郎
「小熊座」9月号。水面に雨の粒が広がって、いよいよ梅雨入りかと思う日、水底に目を凝らしてみました。水面を躍る雨の波紋に比べますと、水底は静かにこれから始まる梅雨に堪えようとしています。それを「水の重さ」というこの上ない表現で言い止めた作者。この重さは、東北の重さに通じているように感じられてなりません。
*大阪教育大柏原キャンパスの秋が深まってきました。
「小熊座」9月号。水面に雨の粒が広がって、いよいよ梅雨入りかと思う日、水底に目を凝らしてみました。水面を躍る雨の波紋に比べますと、水底は静かにこれから始まる梅雨に堪えようとしています。それを「水の重さ」というこの上ない表現で言い止めた作者。この重さは、東北の重さに通じているように感じられてなりません。
*大阪教育大柏原キャンパスの秋が深まってきました。
2016年9月12日月曜日
「新米」15句 岡田耕治
「新米」 岡田耕治
京都七句
それぞれの速さ集まり赤蜻蛉
大門を容れて暑さの残りけり
脚を投げ出して紅葉の三千院
ひともとの萩にしてまた揺れ始む
一万の歩数を超えて鰯雲
秋灯弥陀にくるりと髭のあり
弥陀観音勢至を開き星月夜
取れ立ての卵をかけて今年米
虫時雨仕上げまで居ることにする
温め酒しばらく離れ置くことに
新米や運ぶことのみ残りたる
黒板の前が整う野菊かな
校門の閉じられてより涼新た
質問を考えている轡虫
すれ違うときに触れたる秋桜
*大阪にも林檎の木が育っています。
京都七句
それぞれの速さ集まり赤蜻蛉
大門を容れて暑さの残りけり
脚を投げ出して紅葉の三千院
ひともとの萩にしてまた揺れ始む
一万の歩数を超えて鰯雲
秋灯弥陀にくるりと髭のあり
弥陀観音勢至を開き星月夜
取れ立ての卵をかけて今年米
虫時雨仕上げまで居ることにする
温め酒しばらく離れ置くことに
新米や運ぶことのみ残りたる
黒板の前が整う野菊かな
校門の閉じられてより涼新た
質問を考えている轡虫
すれ違うときに触れたる秋桜
*大阪にも林檎の木が育っています。
2016年9月11日日曜日
香天集9月11日(追加) 中濱信子、選後随想
香天集9月11日(追加) 岡田耕治 選
中濱信子
向日葵の中指切りを唱え合う
男には幼き仕草かき氷
空蝉に一世の力残りけり
夜の秋机に匂う正露丸
〈選後随想〉
男より肝すわりたる昼の虫 中嶋飛鳥
虫たちは、自分のテリトリーを示したり、メスを求めたりするために一心に鳴きます。その声は、世の男たちよりも肝が据わっているように聞こえる、と。夜になると顕在化する虫の声ですが、昼間に鳴いている声を、それほど大きくないけれども、しっかりと認めようとする作者の、創作への意気込みが感じられます。
中濱信子
向日葵の中指切りを唱え合う
男には幼き仕草かき氷
空蝉に一世の力残りけり
夜の秋机に匂う正露丸
〈選後随想〉
男より肝すわりたる昼の虫 中嶋飛鳥
虫たちは、自分のテリトリーを示したり、メスを求めたりするために一心に鳴きます。その声は、世の男たちよりも肝が据わっているように聞こえる、と。夜になると顕在化する虫の声ですが、昼間に鳴いている声を、それほど大きくないけれども、しっかりと認めようとする作者の、創作への意気込みが感じられます。
香天集9月11日 中嶋飛鳥、久堀博美、木村朴ほか
香天集9月11日 岡田耕治 選
中嶋飛鳥
すめらぎの声平らかに秋に入る
男より肝すわりたる昼の虫
秋の風補助線を入れ整える
小鳥来る計画にない水溜り
久堀博美
家守来て玻璃の灯りを点しけり
棚の本並べ直して夏終る
集まりて個個に自在や秋茜
迷わずにここまで来たり草の絮
木村 朴
汗しとど見上ぐる雲の無心かな
炎昼のここに居りけり靴磨き
退くことの出来ぬ天皇夜の蝉
軍港のカレーライスと秋に入る
中村静子
梅雨茸乾びて空の深くなる
満ちて来る闇を揺らして牛蛙
家中の声つつ抜ける網戸かな
秋暑しだみ声放つ孔雀にて
宮下揺子
五人居て薬の話百日紅
熱帯夜点眼薬を差して寝る
終戦記念日押麦を入れて炊く
緩やかに羅を着て八十歳
中嶋飛鳥
すめらぎの声平らかに秋に入る
男より肝すわりたる昼の虫
秋の風補助線を入れ整える
小鳥来る計画にない水溜り
久堀博美
家守来て玻璃の灯りを点しけり
棚の本並べ直して夏終る
集まりて個個に自在や秋茜
迷わずにここまで来たり草の絮
木村 朴
汗しとど見上ぐる雲の無心かな
炎昼のここに居りけり靴磨き
退くことの出来ぬ天皇夜の蝉
軍港のカレーライスと秋に入る
中村静子
梅雨茸乾びて空の深くなる
満ちて来る闇を揺らして牛蛙
家中の声つつ抜ける網戸かな
秋暑しだみ声放つ孔雀にて
宮下揺子
五人居て薬の話百日紅
熱帯夜点眼薬を差して寝る
終戦記念日押麦を入れて炊く
緩やかに羅を着て八十歳
*時々寄る泉佐野市内のカフェにて。
2016年9月10日土曜日
世界とは何処も果や夏蓬 高野ムツオ
世界とは何処も果や夏蓬 高野ムツオ
「小熊座」9月号。自分中心に世界があると捉えがちだからでしょう。「何処も果」という表現にドキッとします。生命力をあふれる夏蓬がはびこるように、希望の持てない、残酷な現実は、今や世界のどこにでも繁殖しています。「でも、そんなことは嘆くまでもない、「何処も果」なんだから」という構えに、かえって救われるように感じられます。
*神戸ハーバーランドにある兵庫教育大のサテライト前の道路。
「小熊座」9月号。自分中心に世界があると捉えがちだからでしょう。「何処も果」という表現にドキッとします。生命力をあふれる夏蓬がはびこるように、希望の持てない、残酷な現実は、今や世界のどこにでも繁殖しています。「でも、そんなことは嘆くまでもない、「何処も果」なんだから」という構えに、かえって救われるように感じられます。
*神戸ハーバーランドにある兵庫教育大のサテライト前の道路。
2016年9月8日木曜日
自転車を押せば濃くなる天の川 早瀬淳一
自転車を押せば濃くなる天の川 早瀬淳一
「船団」110号、第8回船団賞受賞作から。乗ってきた自転車を止めて、星を見ながら考え事をしていたのでしょうか。自転車に乗るのではなく、「押す」というさりげない行為が、この場合とても効いています。もう少し、星空を見ながら行こうという心を感じますし、誰かと一緒にいて話ながら押していくという姿を想像することもできます。気持ちがいいから行動が生まれるのではなく、自転車を押すという行動が気持ちの流れを生む、そんな細やかな情景の書き手と出会うことができました。
*泉佐野市から見える列車と秋の花火です。
「船団」110号、第8回船団賞受賞作から。乗ってきた自転車を止めて、星を見ながら考え事をしていたのでしょうか。自転車に乗るのではなく、「押す」というさりげない行為が、この場合とても効いています。もう少し、星空を見ながら行こうという心を感じますし、誰かと一緒にいて話ながら押していくという姿を想像することもできます。気持ちがいいから行動が生まれるのではなく、自転車を押すという行動が気持ちの流れを生む、そんな細やかな情景の書き手と出会うことができました。
*泉佐野市から見える列車と秋の花火です。
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