春の気配がしていたのに、また寒さが戻ってしまいました。
本日、先生の句集「使命」が届きました。お送りいただきありがとうございました。
今日は早めに帰宅できたので、さっそく拝読いたしました。凝縮され、選び抜かれた言葉のつながりは、その瞬間を見ていないのにすっとイメージできるんですね。
「大寒の学校中を開きけり」 寒い中毎年開催するほそごう学園の公開研の空気感がそのまま伝わります。この頃は、コロナとも無縁で解放的でした。コロナ禍の今とあっては、換気のために寒いのにあちこちの窓も扉も開け放っての公開授業を連想してしまいます。ほんとに長年にわたりお世話になっております。
「白シャツを入れ抽斗を出る空気」も、ぶわっとイメージがわきました。結婚のときに母が買ってくれた飛騨の桐ダンス。精緻につくられているのか、閉めると空気とともに桐の香りがします。そのタンスにしまう衣服はちょっと特別扱いです。
お母様の感染のお話を伺っていたので、入院に際しての一句一句から抜き差しならない状況や先生の想いが想像できて、とくに「防護服冬の日影を鳴らし来る」は、心臓がドキリといたしました。昨年の春、私の息子の咳が治まらず、かかりつけ医に行ったところ、車での待機を告げられ、なじみの先生が防護服をまとって玄関から出てこられた時には、心底怖くなったのを覚えています。一気に非日常に引きずり込まれたようでした。(結局喘息性の咳だったのですが)
また、「寒波来るベッドにS字フック足し」は、4年前に母が動脈瘤破裂で命の瀬戸際にあったとき、集中治療室にいる間は何にも必要なかったのですが、少し持ち直して、一般病棟に移ったあと、便利なようにとS字フックであれもこれもと袋をぶら下げたことを思い出しました。看病あるあるだなあと・・・。まさか、俳句にS字フックが登場するなんてと意外でしたが、お母様の入院生活が快適なようにとご家族があれこれ工夫されていることが伝わる優しい句で好きです。
お母様が無事回復なさって、本当に何よりでした。
久々に、言葉の海にどっぷりとつかり豊かな時間を過ごさせていただきました。
ほそごう学園 大坪泰子