鈴木六林男の技術(1)
目的を持って書く
https://youtu.be/8P3B8ORX03U
2019年9月30日月曜日
「名古屋・白川郷」15句 岡田耕治
名古屋・白川郷 岡田耕治
名古屋五句
二杯目に移る香りのひつまぶし
若松を老松に替え秋灯
水衣大きく広げ月を待つ
霧雨の一瞬に生れ名古屋城
稲妻や巨大迷路の中に居て
白川郷十句
団栗を踏んで一生ものの靴
九十を超えたる背筋蓮の実
新蕎麦の技に順序のありにけり
本人に近づいている赤蜻蛉
天の川よく寝たと言う団長と
胃に移るすったて汁の新大豆
蓑虫のふくみ笑いをしておりぬ
口を利くことのなくなり秋桜
圏外となりし九月の森に居る
立ち位置を迷いはじめる案山子かな
*名古屋城にて。
2019年9月29日日曜日
香天集9月29日 夏礼子、森谷一成、中嶋飛鳥ほか
香天集9月29日 岡田耕治 選
夏 礼子
空蝉の祈るかたちに地に向かう
声もたぬ蝉の短き飛翔かな
鳴り止まぬ電話のどこか秋暑し
竹の春近道二つ教えらる
森谷一成
撃たれたりただ青白くはたた神
一列に枯れるひまわり俘虜のこと
蜻蛉の抱きたわむるる浮葉水
水引に浄められしが人込みへ
中嶋飛鳥
長き夜の女雄々しく角曲がる
切株の履歴に臀を置くや秋
彼岸花可笑しくて咲(わら)ってるのじゃありません
ソース味の煎餅齧り九月尽く
浅海紀代子
カーテンを洗いて夏を送りけり
かなかなを聞かなくなりし齢かな
一匹を呼べば五匹に秋夕べ
天の川死にゆく猫を傍らに
前塚かいち
手拭で拭ひてほしいと墓洗ふ
秋澄むや見へざる手錠外さるる
一枚の瓦に重さ台風禍
秋暑し抹茶紅茶を飲んでゐる
木村博昭
去年より老いたる吾に赤とんぼ
介護士はイスラム教徒三日(みっか)月
秋蝉の骸仰向く空の青
遠く居て通じておりぬ黒葡萄
河野宗子
ゆきずりの人を親しく秋の風
夕菅や人の気配のなくなりて
浅間山いま静かなり雲の峰
ひぐらしや雨戸を閉める音に添い
釜田きよ子
難民の子供救えと秋の声
ふくらはぎ鍛えよという案山子かな
正統派の赤でありけり唐辛子
彼岸花破れかぶれに破れおり
北川柊斗
高原に風のしづまり星月夜
突然の獣の声も山の秋
秋の日の山峡わたる早さかな
天高しロープウエイの急勾配
坂原梢
潮騒のいつも聞こえてカンナ燃ゆ
農日記今日で終わりと菜種蒔く
秋晴れの三十八階のタピオカティ
気まずさを離る茶柱敬老日
古澤かおる
肉眼に見える限りに花芒
ハイヒール履かなくなりて桐一葉
霧深し遊覧船の巡りくる
ようやっと大根を撒くとき来たり
正木かおる
めぐりあい還るとき来る遠花火
秋郊のぽつりハンカチ兎かな
草の穂や天使の町に手紙出す
断層を隠す斜面の曼珠沙華
安部礼子
トドメ刺す人間らしき下り簗
村の名を蝕んでいる踊りの輪
秋黴雨うらみの歴を辿りたる
雨音と砂の崩れる音 無月
*白川郷にて。
夏 礼子
空蝉の祈るかたちに地に向かう
声もたぬ蝉の短き飛翔かな
鳴り止まぬ電話のどこか秋暑し
竹の春近道二つ教えらる
森谷一成
撃たれたりただ青白くはたた神
一列に枯れるひまわり俘虜のこと
蜻蛉の抱きたわむるる浮葉水
水引に浄められしが人込みへ
中嶋飛鳥
長き夜の女雄々しく角曲がる
切株の履歴に臀を置くや秋
彼岸花可笑しくて咲(わら)ってるのじゃありません
ソース味の煎餅齧り九月尽く
浅海紀代子
カーテンを洗いて夏を送りけり
かなかなを聞かなくなりし齢かな
一匹を呼べば五匹に秋夕べ
天の川死にゆく猫を傍らに
前塚かいち
手拭で拭ひてほしいと墓洗ふ
秋澄むや見へざる手錠外さるる
一枚の瓦に重さ台風禍
秋暑し抹茶紅茶を飲んでゐる
木村博昭
去年より老いたる吾に赤とんぼ
介護士はイスラム教徒三日(みっか)月
秋蝉の骸仰向く空の青
遠く居て通じておりぬ黒葡萄
河野宗子
ゆきずりの人を親しく秋の風
夕菅や人の気配のなくなりて
浅間山いま静かなり雲の峰
ひぐらしや雨戸を閉める音に添い
釜田きよ子
難民の子供救えと秋の声
ふくらはぎ鍛えよという案山子かな
正統派の赤でありけり唐辛子
彼岸花破れかぶれに破れおり
北川柊斗
高原に風のしづまり星月夜
突然の獣の声も山の秋
秋の日の山峡わたる早さかな
天高しロープウエイの急勾配
坂原梢
潮騒のいつも聞こえてカンナ燃ゆ
農日記今日で終わりと菜種蒔く
秋晴れの三十八階のタピオカティ
気まずさを離る茶柱敬老日
古澤かおる
肉眼に見える限りに花芒
ハイヒール履かなくなりて桐一葉
霧深し遊覧船の巡りくる
ようやっと大根を撒くとき来たり
正木かおる
めぐりあい還るとき来る遠花火
秋郊のぽつりハンカチ兎かな
草の穂や天使の町に手紙出す
断層を隠す斜面の曼珠沙華
安部礼子
トドメ刺す人間らしき下り簗
村の名を蝕んでいる踊りの輪
秋黴雨うらみの歴を辿りたる
雨音と砂の崩れる音 無月
*白川郷にて。
2019年9月28日土曜日
木枯過ぎ日暮れの赤き木となれり 西東三鬼
木枯過ぎ日暮れの赤き木となれり 西東三鬼
「六林男よ、先程来の木枯のように、冷たい風が吹き抜けてゆくのが人生だ。でも今訪れつつある静けさのように、穏やかなときも来るだろう。夕日を集めるこの木のごとく、力をたくわえて俳句を書き続けていれば、きっとお前はその存在を多くの人に喜ばれるようになるだろう。その日がくることを祈って、この句を贈るよ」。写真は、鈴木六林男邸の客間に今も掲げられている西東三鬼の肉筆です。この一枚からこんな言葉を想起しました。本日9月28日は、鈴木六林男生誕百年の日。六林男の生誕を誰よりも喜んだのは、師の三鬼であったにちがいありません。
「六林男よ、先程来の木枯のように、冷たい風が吹き抜けてゆくのが人生だ。でも今訪れつつある静けさのように、穏やかなときも来るだろう。夕日を集めるこの木のごとく、力をたくわえて俳句を書き続けていれば、きっとお前はその存在を多くの人に喜ばれるようになるだろう。その日がくることを祈って、この句を贈るよ」。写真は、鈴木六林男邸の客間に今も掲げられている西東三鬼の肉筆です。この一枚からこんな言葉を想起しました。本日9月28日は、鈴木六林男生誕百年の日。六林男の生誕を誰よりも喜んだのは、師の三鬼であったにちがいありません。
2019年9月25日水曜日
「この墨」15句 岡田耕治
この墨 岡田耕治
月夜この墨を届けるために磨る
ものを焼く匂いをさせて鬼やんま
注文のはじめに決まり衣被
落花生いたずらっぽくなってくる
学習のはじめに立てて秋薔薇
唐辛子父と母とを連れ出して
子の秋思抱き上げてから顔を見る
小鳥来るポップコーンを鳴らし合い
秋味をほぐしてゆけり陶の板
低く速く運動会の組体操
秋桜足を優しく使いけり
人数が足りなくなりし良夜かな
倉吉三句
二人から四人になっていく花野
秋の川降りてゆく径現れて
定年を迎う課長の天の川
月夜この墨を届けるために磨る
ものを焼く匂いをさせて鬼やんま
注文のはじめに決まり衣被
落花生いたずらっぽくなってくる
学習のはじめに立てて秋薔薇
唐辛子父と母とを連れ出して
子の秋思抱き上げてから顔を見る
小鳥来るポップコーンを鳴らし合い
秋味をほぐしてゆけり陶の板
低く速く運動会の組体操
秋桜足を優しく使いけり
人数が足りなくなりし良夜かな
倉吉三句
二人から四人になっていく花野
秋の川降りてゆく径現れて
定年を迎う課長の天の川
2019年9月22日日曜日
香天集9月22日 三好広一郎、石井冴、谷川すみれ、玉記玉ほか
香天集9月22日 岡田耕治 選
三好広一郎
ふだん何してる男か鹿を呼ぶ
馬鈴薯のさみしい奴がコロッケに
大根蒔く五欲洗った水を散く
身の内に鬼のおりけり桃ひとつ
石井 冴
人間を水の流れる夜の秋
動かぬは一昨昨年のやもりかな
車椅子だんだん軽く草の花
騒騒は盗人萩を識ってより
谷川すみれ
雪螢三次元に隙間あり
裸木の手の届かない雨の粒
握り合う右手左手雪の声
人という不治の病を冬の滝
玉記 玉
竹箒ください流星の止まる
蜻蛉にあらずSEIKOの秒針
鹿の斑の白さ少女の不実ほど
秋澄むや円形テーブルに方位
柴田 亨
幾筋も旋律のあり空高し
不揃いの石仏の秋並び立つ
病む猫に触れて静かに語り出す
樹の上にありカマキリが刃砥ぐ
加地弘子
蟋蟀の掴まっている重さかな
早くから見つけし通草熟れはじむ
法師蝉誰かが動き鳴きやみぬ
薄原ここから先は飛んでゆく
橋本惠美子
引き潮の泡より生まる赤手蟹
決心を遺す洞窟蝉時雨
胃の中に居座っておる夏の風邪
蜩に聞こえぬふりをしていたる
砂山恵子
わたくしもその他大勢文化祭
ブルーシート案山子一人を拉致したる
すれ違ふ知らぬ足音鳥脅し
アルバムから剥がす笑顔よ初時雨
辻井こうめ
すべらかに鎌たたみをりいぼむしり
ソンナニモソシリハムナシ秋扇
新涼やうすむらさきのミント咲く
真円に少し足りないけふの月
中嶋紀代子
見える道まだ見えぬ道秋遍路
風の盆第六絶滅期のうちの
とんぼうのような人だと言われけり
民さんに例えられたる野菊かな
北村和美
稲光無声映画の冷えた椅子
点点と残る水滴いわし雲
休暇明筋肉の名を諳じて
電灯に声のなかりし稲光
羽畑貫治
検査日の水ばかり飲み菊日和
尻穴にカメラ突っ込む寒露かな
手を繋ぎあの日に戻る紅葉狩
身に入むや妻の眼差し杳として
永田 文
父祖の田や雲までつづく蕎麦の花
葉擦れ日のゆっくり揺れて涼新た
節榑の十指をかざす敬老日
草の花野にある如く瓶に挿す
中辻武男
秋今宵風が運べる遠太鼓
名月を眺めて祈る想いかな
来客に面影写す敬老日
まほろばとなりて光れる稲穂かな
堺市仁徳天皇百舌鳥耳原中陵にて。
2019年9月19日木曜日
「茨城大学」12句 岡田耕治
茨城大学 岡田耕治
新学期猫と鼻とを押しつけて
夕陽よく通して飛べり赤蜻蛉
薄紅葉そこから乾きはじめたる
揺れておりまだ名を識らぬ秋の草
こんなこと出来たらいいと月を待つ
幾たびも水を替えたる良夜かな
茨城大学六句
水戸納豆今日を素早く回しけり
どこまでも正解のない秋の空
台風のあとパレードの始まりぬ
モニュメント秋の日と陰まといたる
図書館あり銀杏黄葉の正面に
弘前の人と出てゆく花芒
2019年9月15日日曜日
香天集9月15日 澤本祐子、神谷曜子
香天集9月15日 岡田耕治 選
澤本祐子(八月)
テーブルの切り子のグラス冷し酒
切り分けてまだ濡れている西瓜かな
墨かすれ土用うなぎの太き文字
老人を捜す放送梅雨の明け
神谷曜子
櫟の実博物館のジオラマに
蝸牛子との境界さまよいぬ
草原になりし晩夏の我が家かな
閉店の書店をのぞき帰省の子
澤本祐子(六月)
葱坊主つんつん伸びて一列に
ひとまわりカーテン揺らし風薫る
薔薇園うれしき事のよみがえり
緋目高のこぼれんばかり鉢に雨
澤本祐子(七月)
再会の残りの時間ソーダ水
さよならに順序のなくて百日紅
唇や水蜜桃に奪わるる
座禅組む大本堂の青葉風
*茨城大学水戸キャンパスにて。
澤本祐子(八月)
テーブルの切り子のグラス冷し酒
切り分けてまだ濡れている西瓜かな
墨かすれ土用うなぎの太き文字
老人を捜す放送梅雨の明け
神谷曜子
櫟の実博物館のジオラマに
蝸牛子との境界さまよいぬ
草原になりし晩夏の我が家かな
閉店の書店をのぞき帰省の子
澤本祐子(六月)
葱坊主つんつん伸びて一列に
ひとまわりカーテン揺らし風薫る
薔薇園うれしき事のよみがえり
緋目高のこぼれんばかり鉢に雨
澤本祐子(七月)
再会の残りの時間ソーダ水
さよならに順序のなくて百日紅
唇や水蜜桃に奪わるる
座禅組む大本堂の青葉風
*茨城大学水戸キャンパスにて。
2019年9月13日金曜日
「秋暑し」15句 岡田耕治
秋暑し 岡田耕治
秋暑しここからあなたまでの距離
花野径別別に来て共に去る
生きながら喰われていたる蟷螂よ
体調が戻りし友の桃白し
音立てて沈みゆきたる秋の雨
朽ちてゆく木の階の茸かな
栗の飯一杯だけにしておけと
買い物のはじめ林檎の香を過り
学生の暮らしを抜けて土瓶蒸
まだ誰も食べたことなき鰍かな
離れずに離れられずに飛ぶ蜻蛉
太刀魚としばらく横になっており
二周目に入っていたる蜩よ
青空の大きく水の澄みゆけり
一筋の抜けそうにない秋思かな
2019年9月8日日曜日
香天集9月8日 渡邉美保、三好つや子、橋爪隆子ほか
香天集9月8日 岡田耕治 選
渡邉美保
空蟬に眼の履歴ありにけり
天牛の給水塔まで行くつもり
コンテナの列を目で追ひ夜の秋
山の日やピザ窯作るチーム組み
三好つや子
夏の月標本箱のマンションに
星涼し絵本にもどる消防車
龍口(たつのくち)に微光をあつめ秋の水
二百十日の音吹きだまる荒物屋
橋爪隆子
熟れてゆく熟れ過ぎてゆく桃の夜
信号の一分半の秋暑し
睡蓮の水の余白に雲流る
鉢植の思う存分アマリリス
宮下揺子
八月一五日水木しげるの名刺から
蓮の花カメラを向ける車椅子
会う度に最後と思い蓼の花
行間に雑木山あり大西日
岡田ヨシ子
草を刈る歳を忘れていくように
命より大きなものを蟻が曳く
秋に入る避難袋の常備薬
半分はお隣さんへ南瓜煮る
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
渡邉美保
空蟬に眼の履歴ありにけり
天牛の給水塔まで行くつもり
コンテナの列を目で追ひ夜の秋
山の日やピザ窯作るチーム組み
三好つや子
夏の月標本箱のマンションに
星涼し絵本にもどる消防車
龍口(たつのくち)に微光をあつめ秋の水
二百十日の音吹きだまる荒物屋
橋爪隆子
熟れてゆく熟れ過ぎてゆく桃の夜
信号の一分半の秋暑し
睡蓮の水の余白に雲流る
鉢植の思う存分アマリリス
宮下揺子
八月一五日水木しげるの名刺から
蓮の花カメラを向ける車椅子
会う度に最後と思い蓼の花
行間に雑木山あり大西日
岡田ヨシ子
草を刈る歳を忘れていくように
命より大きなものを蟻が曳く
秋に入る避難袋の常備薬
半分はお隣さんへ南瓜煮る
*大阪教育大学柏原キャンパスにて。
2019年9月5日木曜日
「百点」12句 岡田耕治
百点 岡田耕治
百点を取りたい子らの轡虫
豊年の風を背にしてデニムシャツ
秋夕焼バケツにボール嵌まりたる
鈴虫が通信履歴消しゆけり
ロボットの眼に写る夜寒かな
たっぷりと油を含み水茄子
秋簾スターバックスコーヒーの
立つときは狗尾草を掴みけり
どうしても眠くなりたる茸かな
秋日傘骨の歪みをともないて
何もかも鴉になりて秋の風
休暇終わる新規採用教員の
百点を取りたい子らの轡虫
豊年の風を背にしてデニムシャツ
秋夕焼バケツにボール嵌まりたる
鈴虫が通信履歴消しゆけり
ロボットの眼に写る夜寒かな
たっぷりと油を含み水茄子
秋簾スターバックスコーヒーの
立つときは狗尾草を掴みけり
どうしても眠くなりたる茸かな
秋日傘骨の歪みをともないて
何もかも鴉になりて秋の風
休暇終わる新規採用教員の
2019年9月1日日曜日
香天集9月1日 玉記玉、森谷一成、橋本惠美子ほか
香天集9月1日 岡田耕治 選
玉記玉
翡翠の羽のしずくから老いる
逝く夏や魚影ふたつみつ少女
桐一葉水中の水掴みけり
秋雨は斜めだったり夢中だったり
森谷一成
出水入れ高層群へくねるべし
ビー玉の朱なる墜景行行子
炎天の身を一本の翳に入れ
つまらぬ奴がいばる八月十五日
橋本惠美子
フルフェースの目と目を合わせ走り梅雨
白南風や坊ちゃん刈りのくびねっこ
働き方改め蟻の出てきたる
台風やストックの底見えてくる
前塚かいち
猫じやらし遊び疲れて捨てられて
恐竜の声が聞こゆる夏休
放哉の句集を譲り盆休
絵手紙の西瓜の種に残る暑さ
釜田きよ子
押し出され戸惑っている心太
サングラスの中の目玉を想像す
朝顔に寝起きの顔をさらしけり
味わえる男の料理胡瓜もみ
坂原梢
麻酔から覚めたる母に八月来
一日の玉の結晶麦藁帽
炎天の時間をかけて水をやる
風鈴の鳴りて静かな回廊よ
浅海紀代子(7月)
梅雨明けやあまたの音が耳を抜け
今朝ひらく百合に心を定めけり
緑陰に目を閉じ次の風を待つ
草引きの草をほめたり憎んだり
中濱信子(7月)
雨打って紫陽花の青仕上りぬ
蝙蝠のピンク色なら愛される
博打の木これより先は木下闇
桔梗咲く叩いて干せる洗濯物
北川柊斗
うすれたるデニムの藍よ天高し
提灯の二つ新し地蔵盆
秋暑し景ひづませしバスドラム
涼新た壁に眼球断面図
中濱信子(8月)
入道雲テトラポッドに潮溜り
夏燕投票おえた吾の上に
真二つに切って誉めたる西瓜かな
新涼のバッグいつもの小鉛筆
浅海紀代子(8月)
ほととぎす夢のあわいを探りけり
縄文系弥生系居てかき氷
落蝉の目ん玉二つ宙睨み
溜息の度に鬼灯赤くなり
北村和美
秋立つやY字路のカフェ匂い立ち
七夕の言の葉の丈揃えけり
リビングの床が寝床や夏の月
ウクレレを取り出してくる晩夏かな
朝岡洋子
麻日傘写真の中の若き父
シベリアの冬知る人の夏の葬
ベランダのポットに茄子の棘硬し
夏木立コース迄影くっきりと
玉記玉
翡翠の羽のしずくから老いる
逝く夏や魚影ふたつみつ少女
桐一葉水中の水掴みけり
秋雨は斜めだったり夢中だったり
森谷一成
出水入れ高層群へくねるべし
ビー玉の朱なる墜景行行子
炎天の身を一本の翳に入れ
つまらぬ奴がいばる八月十五日
橋本惠美子
フルフェースの目と目を合わせ走り梅雨
白南風や坊ちゃん刈りのくびねっこ
働き方改め蟻の出てきたる
台風やストックの底見えてくる
前塚かいち
猫じやらし遊び疲れて捨てられて
恐竜の声が聞こゆる夏休
放哉の句集を譲り盆休
絵手紙の西瓜の種に残る暑さ
釜田きよ子
押し出され戸惑っている心太
サングラスの中の目玉を想像す
朝顔に寝起きの顔をさらしけり
味わえる男の料理胡瓜もみ
坂原梢
麻酔から覚めたる母に八月来
一日の玉の結晶麦藁帽
炎天の時間をかけて水をやる
風鈴の鳴りて静かな回廊よ
浅海紀代子(7月)
梅雨明けやあまたの音が耳を抜け
今朝ひらく百合に心を定めけり
緑陰に目を閉じ次の風を待つ
草引きの草をほめたり憎んだり
中濱信子(7月)
雨打って紫陽花の青仕上りぬ
蝙蝠のピンク色なら愛される
博打の木これより先は木下闇
桔梗咲く叩いて干せる洗濯物
北川柊斗
うすれたるデニムの藍よ天高し
提灯の二つ新し地蔵盆
秋暑し景ひづませしバスドラム
涼新た壁に眼球断面図
中濱信子(8月)
入道雲テトラポッドに潮溜り
夏燕投票おえた吾の上に
真二つに切って誉めたる西瓜かな
新涼のバッグいつもの小鉛筆
浅海紀代子(8月)
ほととぎす夢のあわいを探りけり
縄文系弥生系居てかき氷
落蝉の目ん玉二つ宙睨み
溜息の度に鬼灯赤くなり
北村和美
秋立つやY字路のカフェ匂い立ち
七夕の言の葉の丈揃えけり
リビングの床が寝床や夏の月
ウクレレを取り出してくる晩夏かな
朝岡洋子
麻日傘写真の中の若き父
シベリアの冬知る人の夏の葬
ベランダのポットに茄子の棘硬し
夏木立コース迄影くっきりと
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